水にっき。

  • 第18回 聲。


  • ここでは、わたし、キンギョが詠ったオリジナルのポエムをご覧いただけます。

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    聲。


    勉強嫌いだったわたしが
    テスト期間中になると朝から寝る寸前まで
    教科書を開きっぱなしで
    ノートをぎっしり字で埋め尽くしていた。

    あのひとが必死でやってたから。
    あのひとはわたしにお手本を見せてくれたんだよ。

    わたしはあのひとの一生懸命やっている姿が好きだった。

    わたしはあのひとの一生懸命やっている姿を見て
    いつのまにかあのひとのまねをしてたんだ。

    勉強嫌いだったわたしが
    知識というものを知ったのは
    あのひとが自分の持っている知をふんだんに使って
    論理的に物事を思考している姿を目の当たりにしたとき。

    わたしはそんなあのひとの
    ひたむきでまっすぐな心に魅了され惹きこまれ
    いつのまにか
    あのひとの背中を一生懸命追いかけてたんだ。

    勉強嫌いだったわたしに目標ができたのは
    あのひとのまっすぐに知識に向き合い
    対話するように自らその知を探りにいこうとするそういう姿勢を見ていたから。


    あの子にとって
    大切なことは
    尊敬している”あのひと”の背中を見て追いかけることだった。

    あの子の心のどこかに
    ”あのひと”はいまもまだいるんだよ。

    あの子の
    遠くの方にある記憶の中の”あのひと”は
    今はもうあの姿のままでこの世にはいない。

    あの子の薄れゆく映像の中の”あのひと”は
    あの子の心の中にかすかに声を残すのみで
    いつかその声さえも
    途切れてなくなるのかな。

    みず部屋へもどるわ。
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    2016年10月6日